飲食店のヴィーガン・ベジタリアン対応の始め方|違い・見落としやすい食材・メニュー表示を観光庁ガイドで解説
「ヴィーガンの料理はありますか」と訪日客に聞かれて、答えに困ったことはありませんか。ヴィーガンやベジタリアンへの対応というと、専用の厨房や認証が必要な大がかりなものに思えるかもしれません。けれども、観光庁のガイドでは「全てを最初から完璧にやろうとするのではなく、できることから始めていきましょう」と案内されています。
この記事では、観光庁が2024年4月にまとめた「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」をもとに、飲食店がヴィーガン・ベジタリアン対応を始めるときに知っておきたいことを整理します。ベジタリアンとヴィーガンの違い、見落としやすい食材、無理のない始め方、メニューの表示と情報発信の順に見ていきます。
目次
ベジタリアンとヴィーガンの違い
観光庁のガイドでは、ベジタリアンとヴィーガンを次のように説明しています。
- ベジタリアン:肉や魚介類を食べず、主に野菜、穀類、きのこ、果物、海藻、それらの加工品を食べる人。卵や乳製品を食べるかどうかは人によって違う
- ヴィーガン:ベジタリアンに加えて、卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチンなども食べない人
さらに細かい分け方もあります。たとえば、乳製品と卵は食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」、魚介類は食べる「ペスカタリアン」、できるだけ菜食を取り入れる「フレキシタリアン」などです。台湾に多い「オリエンタル・ヴィーガン」や「オリエンタル・ベジタリアン」は、仏教の考え方からニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎを含むネギ、アサツキ(五葷)も食べないとされています。
理由も、宗教の信条、動物愛護、環境保護、健康などさまざまです。同じ「ベジタリアン」でも食べられるものは人によって違うため、お店が「この人はこれを食べられるはず」と決めつけず、何を使っているかを伝えて、お客様に選んでもらうことが基本になります。
見落としやすい食材:だし・油・調味料
ヴィーガン・ベジタリアン対応でつまずきやすいのは、肉や魚を「具材として」使っていなくても、だしや油、調味料に動物性の素材が入っていることです。観光庁のガイドでは、次のような点に注意するよう書かれています。
- だし:かつおなど動物由来のだしは、調理方法に関わらず避けられる。具材として使わなくても使用しない。昆布など植物由来のだしを使う
- 油:ラードなど動物由来の油を使った料理は、ベジタリアン等は食べられない
- 調味料・加工食品:一見動物性に見えないものでも、ラベルで動物性の素材が使われていないかを確かめる。たとえばカレールーには、ラードや牛脂、動物性のブイヨン・エキスが入っていることがある
- 砂糖:製造時の加工助剤に動物の骨を使っている場合に避けられることがあるため、砂糖の色にかかわらず注意が必要

置き換えの例
ガイドでは、動物性の食材の置き換え例も紹介されています。
- ゼラチン → 寒天
- 牛乳 → 豆乳、アーモンドミルクなど
- 肉類 → 豆腐、豆、厚揚げ、がんも、原木シイタケ、麩、大豆ミート
新しい料理を一から考えなくても、今のメニューのだしや油を替えるだけで、ベジタリアンの方も、そうでない方も一緒に食べられる料理になることがあります。ガイドでは天丼・カレー・ペペロンチーノ・焼き餃子・味噌煮込みうどんを例に、材料の置き換え方を紹介しています。
調理器具は分けないといけない?
「専用の鍋や包丁がないと対応できないのでは」と考えるお店も多いでしょう。観光庁のガイドのQ&Aでは、キッチン・調理器具は必ず分ける必要はないとしたうえで、肉類などの成分が混ざらないように、調理器具をしっかり洗浄しておくことが重要だとしています。
ガイドの資料編にある2023年12月のウェブアンケート(回答209人)では、専用キッチンや、他の食材が混ざることへの対策ができていなくても、ベジタリアン等の7〜8割が来店する可能性があるという結果が示されています。また、海外旅行のときに食事制限の基準を緩めるかという質問には約4割が「緩める」と答え、訪日経験のある人では約7割が「緩めた」と答えたとされています。
大切なのは、共用しているならそれを正直に伝えることです。厳格な対応を求めるお客様は、その情報をもとに自分で判断できます。
できることから始める4つのステップ
観光庁のガイドでは、対応を4つの段階に分けています。
- Step0 理解を深める:ベジタリアン・ヴィーガンについて、スタッフ全員で基本を知る
- Step1 今のメニューを活かす:既存のメニューをそのまま、またはリクエストに合わせて一部の食材を替えたり抜いたりして提供する
- Step2 常設メニューをつくる:ベジタリアン・ヴィーガン向けの新しいメニューを考え、常に提供する
- Step3 メニューを充実させる:種類を増やし、より選べるようにする
多くのお店にとって現実的なのは、Step0とStep1です。まずは今のメニューのうち、だしや油を替えれば対応できる料理を1〜2品見つけるところから始めましょう。
スタッフで共有しておきたいこと
- どの料理が対応できて、どの料理ができないか
- だし・油・調味料に何を使っているか(原材料を聞かれたときに答えられるようにする)
- 食材を抜く・替えるリクエストに、どこまで応じられるか
- 調理器具を共用しているかどうか
メニューの表示と「対応内容」の伝え方
観光庁のガイドでは、表示の方法を次の3つの段階で紹介しています。
- 文字・口頭:メニューにベジタリアン・ヴィーガン対応を文字で書く。問い合わせに口頭で説明する
- マーク・イラスト:「Vマーク」などの対応マークをメニューに付ける。肉・魚・卵・乳製品などをイラストで示し、使っているかどうかを目で見て分かるようにする
- 認証マーク:第三者の団体による認証を活用する

認証がなくても「何に対応しているか」を示す
ガイドでは、厳格に対応しているかどうかではなく、対応内容を明示することが重要だとしています。たとえば次のような内容を、お店の「ポリシー」として店頭やSNSで示すよう勧めています。
- 使っている食材・使っていない食材
- 第三者機関の認証を取っているかどうか
- 専用の調理場・調理器具を使っているかどうか
ガイドの資料編のアンケートでは、メニューのサイン表示に認証がなくても、ベジタリアン等の8割が来店する可能性があるとされています。認証は選択肢の一つで、まずは正直に情報を出すことが出発点です。英語の文例として、ガイドには次のようなものも載っています。
We have vegetarian/vegan friendly menus.(当店にはベジタリアン/ヴィーガン対応のメニューがあります)
When preparing vegetarian menus, we make sure to clean the cooking utensils before using them.(ベジタリアン対応メニューの調理の際は、調理器具を確実に洗浄してから使っています)
「ヴィーガンカフェ」とだけ書かない
農林水産省は2022年に、ベジタリアン・ヴィーガン料理を提供する飲食店の管理方法についてのJAS規格(JAS 0026)を定めています。この規格では、適さない食材と調理器具を共用する場合はメニュー表などに明記すること、全ての料理が対応しているわけではないのに単に「ヴィーガンカフェ」と書くような、誤解を招く表示をしないことなどが求められています。
JASの認証は事業者が任意で取るもので、取得しなくてもベジタリアン・ヴィーガンの表示はできます。ただ、規格の考え方は、どの店にとっても表示を考えるときの参考になります。対応している料理だけに表示を付け、共用している器具があればその旨を書いておきましょう。メニューの多言語化の考え方は外国人観光客に伝わる多言語メニューの作り方、店内の案内は多言語ポップ・サイネージのテンプレ配布|そのまま使える文例集も参考になります。
対応していることを知ってもらう
対応を始めても、知られなければお客様には届きません。観光庁のガイドでは、オンラインでは自社のホームページ・SNS・口コミサイト、オフラインでは看板やホテルとの連携を活用するよう案内しています。
ガイドでは、ベジタリアン等が飲食店を探すときに最も一般的に使われるツールとして、Googleマップを挙げています。Googleビジネスプロフィール(Googleマップに表示されるお店の情報)の説明文やメニュー、写真で、対応しているメニューを分かるようにしておきましょう。英語での情報の整え方は外国人が迷わない!Googleマップの英語対応術で解説しています。
ムスリム(イスラム教徒)のお客様への対応は、避けるべき食材や伝え方が異なるため、別の記事でまとめています。インバウンド対応全体の進め方はインバウンド対策で飲食店に外国人客を呼び込む方法もご覧ください。
まとめ:完璧より「何に対応しているか」を伝える
ヴィーガン・ベジタリアン対応は、専用の厨房や認証がなくても始められます。大切なのは、使っている食材を正確に伝え、お客様が自分で判断できるようにすることです。
- ベジタリアンは肉や魚介類を食べない人、ヴィーガンは加えて卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチンなども食べない人。食べられるものは人によって違う
- だし(かつお)、油(ラード)、調味料・加工食品の動物性素材を見落とさない
- 調理器具は必ず分ける必要はないが、しっかり洗浄し、共用していることを伝える
- まずは今のメニューを置き換えて1〜2品対応するところから始める
- 対応している料理だけに表示を付け、ポリシーを店頭・SNS・Googleマップで示す
本記事は、観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(令和6年4月)と農林水産省のJAS規格を、2026年10月24日時点で確認した範囲で整理したものです。ガイドにも記載のとおり、内容は全ての方に当てはまるものではありません。アンケートの数値は観光庁の資料に掲載された調査結果で、来店や売上を保証するものではありません。
出典
いずれも2026年10月24日に確認。
- 観光庁「多様な宗教的、文化的習慣を有する旅行者の受入環境の充実」
- 観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」本編(令和6年4月・PDF)
- 観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」資料編(令和6年4月・PDF)
- 農林水産省「日本農林規格 ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法(JAS 0026)」(PDF)
- 農林水産省「日本農林規格調査会 議事録(令和4年6月29日)」
投稿者プロフィール
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飲食店専門のWEB集客支援を行う、matoka株式会社(東京都品川区西五反田)の編集チームです。
普段の仕事は、Googleビジネスプロフィールの運用と口コミ対応(MEO対策)、食べログ・ホットペッパーグルメなどグルメサイトの運用代行、SNS運用とホームページ制作、訪日外国人向けの多言語対応、AIを使ったMEO支援(droptip)、そして成果報酬型のインフルエンサーPR「clues restaurant」の運営です。
このブログには、その現場で実際に手を動かして分かったことを書いています。AI検索(ChatGPTなど)に自分の店がどう出るかの確かめ方、口コミ返信やGoogleマップ投稿の時短、グルメサイトとMEOの使い分け、多言語メニュー、求人票、決済まわりのリスクまで、テーマはすべて店舗からの相談が出発点です。
編集方針は2つあります。営業の合間にスマホで読んでも、その日のうちに1つ試せる形で書くこと。そして成果を保証せず、うまくいかない条件や向かない店舗も併せて書くことです。
集客の困りごとは、matoka.co.jp のお問い合わせページからご相談いただけます。
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