2029年に8%へ戻るとき|反動リスクと、2年間を投資期間にする考え方+連載FAQ

この連載でずっと書いてきたことがあります。切り替えは2回ある。

2027年4月1日に1%へ。そして2029年3月31日で終わり、8%に戻ります。ニュースでは1回目ばかりが取り上げられますが、飲食店にとっては2回目のほうが難しいかもしれません。1回目は「安くなる」、2回目は「上がる」からです。

この記事では、2029年に何が起きるかと、それまでの2年間をどう使うかを扱います。連載のFAQもここにまとめました。

この記事の前提

  • 確定:2026年9月15日に閣議決定された大綱の内容(期間・経過措置の設計)
  • 未確定:法案は未提出です。2029年以降の制度(本格導入される給付の内容など)も決まっていません
  • 最終確認日:2026年9月18日

税務上の判断は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。本記事は経営判断の材料を整理するもので、個別の助言ではありません。

2029年3月31日に何が終わるのか

大綱では、特例税率の適用期間が令和9年4月1日から令和11年3月31日までと明記されています。令和11年3月31日は、西暦で2029年3月31日です。

国税庁の軽減税率制度のページにも、同じ期間が注記されています。

※ 令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の譲渡について、消費税率が引き下げられます。

つまり2029年4月1日から、飲食料品は軽減税率8%に戻ります。

税率は2回切り替わる。2027年4月1日は店内飲食10%・持ち帰り1%で差は9ポイント、2029年4月1日は店内飲食10%・持ち帰り8%で差は2ポイント。店内飲食と酒類は10%のまま変わらない

戻ったあとの飲食店は、こうなります。

  • 店内飲食:10%(2年間ずっと変わっていません)
  • 持ち帰り・出前:1% → 8%
  • 食材の仕入:1% → 8%
  • 酒類:10%(こちらも変わっていません)

店内と持ち帰りの差は、9ポイントから2ポイントに縮みます。いまと同じ状態に戻る、ということです。

制度の側も2回あることを前提に作られています。大綱の総額表示の特例には2029年2月1日〜3月31日2029年4月1日〜5月31日の期間が用意されていますし、中間申告の特例にも令和11年4月1日以後に開始する中間申告対象期間の規定があります。

2回目のほうが難しい理由

同じ作業を2回やるだけに見えますが、性質が違います。

お客様から見れば「値上げ」になる

2027年に税込価格を下げた店は、2029年に上げることになります。制度上の戻しであっても、お客様の体験としては値上げです。

しかも2029年4月は、世の中のあらゆる食料品が同時に上がるタイミングです。スーパーもコンビニも上がります。生活実感としての負担増が重なる時期に、自店も上げることになります。

「戻る」という説明が通じにくい

2年も経つと、2027年に下げたことを覚えているお客様は多くありません。特に2027年以降に来店し始めたお客様にとっては、1%の価格が「その店の価格」です。そこから上がれば、単なる値上げに見えます。

だからこそ、2027年の時点で「2029年3月までの価格である」と伝えておくことに意味があります。1回目の告知が、2回目の説明を楽にします。

価格差で来ていた客は戻る理由を持たない

2年間、持ち帰りが店内より安い状態が続きます。その価格差を理由に持ち帰りを選んでいたお客様は、差が2ポイントに縮んだ時点で、選ぶ理由を失います。

これは持ち帰りを伸ばすなという話ではありません。価格以外の理由を並行してつくっておかないと、2年で積んだものが2029年に目減りするという話です。

2年間を「投資期間」として使う

ここが、この連載の結論にあたる部分です。

2027年4月からの2年間、飲食店には2つの変化が同時に来ます。持ち帰りが相対的に安くなることと、本則課税なら納税が増える方向に動くこと。追い風と向かい風が同時に吹きます。

この2年をどう位置づけるか。「安くなる2年間」と見るか、「2029年以降も残るものをつくる2年間」と見るかで、打ち手が変わります。

2029年以降も残るもの

価格が戻っても消えないものを、3つ挙げます。いずれも新しい投資が要るものではありません。

1. 「持ち帰りができる店」という認知
価格は戻りますが、知られていること自体は残ります。持ち帰りを始めるなら、商品づくりと同時に知ってもらう側の整備を進めてください。手順はテイクアウトを強化するなら今にまとめています。

2. 常連との連絡手段
お客様と直接つながる手段があれば、2029年の価格改定を説明つきで伝えられます。いきなり店頭で気づかれるのとは、受け取られ方が変わります。

3. 価格以外で選ばれる理由
できたてであること、席と時間を使えること、その店でしか出せないもの。すでに提供している価値を、言葉にしておくだけで足ります。

逆に、2年で終わるもの

価格の安さだけを訴求した集客は、2029年に効果を失います。「いまなら安い」で集めた客数は、そのまま指標にしないほうが安全です。2年後に同じ数字を維持できる前提で計画を立てると、見誤ります。

1回目の作業を、2回目のために残す

実務の話です。2027年の作業をやりっぱなしにせず、記録として残すだけで2029年が楽になります。

残しておくものは3つです。

1. 価格を表示している場所の一覧
メニュー、券売機、サイト、アプリ、グルメサイト、SNS。洗い出した一覧をそのまま保存してください。2029年に同じ場所を更新することになります。

2. レジ・システムの設定変更の手順
誰が、どこを、どう変えたか。担当者が変わっていても再現できる形で残します。スクリーンショットでも十分です。

3. 判定で迷ったケース
店内か持ち帰りか、判断に迷った場面と、そのときの結論。2回目は迷わずに済みます。

時系列の整理は準備ロードマップにまとめています。

連載FAQ

連載を通してよくある論点を、短く答えます。

Q. 結局、飲食店は得をするのですか。
店によって違います。持ち帰り比率が高ければ売上側で追い風になりますが、本則課税で店内飲食が中心なら納税は増える方向に動きます。「飲食店の減税」ではない、というのがこの連載の出発点です。

Q. 店内飲食も1%になる可能性はありますか。
大綱は「軽減税率の適用対象である飲食料品の範囲……については、現行制度を維持する」としています。現行制度で外食は対象外です。ただし法案は未提出なので、確定は成立を待つことになります。

Q. お酒はどうなりますか。
酒類は飲食料品から除かれるため、店内でも持ち帰りでも10%のままです。仕入も同じです。

Q. 値下げしないと違法ですか。
税込価格を表示する義務はありますが、税抜価格をいくらに設定するかについての定めは、大綱にも国税庁の資料にもありません。ただし「税抜のみ」「+税」といった税込価格を表示しない方法は、引き続き認められません。

Q. 準備はいつから始めればよいですか。
大綱には2027年1月1日という基準日があります(定期供給契約・通信販売)。該当する取引がある店は、2026年内に洗い出しておく必要があります。

Q. レジは買い替えが必要ですか。どれくらいかかりますか。
販売元に確認してください。目安として、経済産業省が2026年6月の実務者会議に示した資料では、大型のPOSと基幹システムを持つ小売業を前提に「1%なら制度の詳細公表後5〜6か月程度」というシステムメーカーの見解と、小売業界へのヒアリングで「概ね半年以内」との声が大宗だったことが紹介されています。タブレット型のスマートレジは同資料で「低コストで迅速な導入が可能」とされており、自店のレジの種類で必要な時間は変わります。

Q. 補助金はいつ出ますか。
2つに分けて考えてください。大綱が示す外食事業者向けの新しい支援は「予算編成過程において支援内容を具体化する」とされており、内容・金額・時期は決まっていません。一方、既存の「デジタル化・AI導入補助金」には、いまから使える制度があります。中小企業庁は2026年9月15日、9月15日以降に着手したスマートレジ導入・POSレジ改修をあとから申請できる「事前着手制度」を発表し、運営事務局は「申請受付は2027年1月頃を予定」としています。補助率は小規模事業者で最大4/5です。公募要領の公開を待って要件を確認してください。

Q. 簡易課税のままで大丈夫ですか。
店によります。大綱は届出の期限を「課税期間の末日まで」に緩め、簡易課税の2年縛りも外しています。実際の数字を見てから判断し直せる設計です。判断は顧問税理士にご相談ください。

Q. 2029年のあと、どうなるのですか。
大綱では、給付の仕組み(就業者負担軽減支援金)を令和11年度に本格導入するとしています。飲食料品の税率は8%に戻る一方、給付の側が本格的に始まる、という組み立てです。総理会見(2026年7月30日)では先行導入を「令和9年6月以降」としています。基本方針(2026年8月5日閣議決定)は対象について、給与所得者だけでなく個人事業者・フリーランスも含むとしており、小規模店のオーナー自身が受給者になりうる設計です。ただし支給の金額や所得の線引きは、いずれの文書にも記載がなく、決まっていません。

Q. 店内飲食が10%のままなのは、うちの店だけ損ではないですか。
外食全体が同じ扱いです。ただし、中食(惣菜・弁当)との差が開くのは事実で、その影響の受けやすさは業態と時間帯によって変わります。平日ランチ中心の店は比較されやすく、酒類中心の店は影響を受けにくい——という整理になります。

Q. この記事の内容はいつ更新されますか。
法案の提出・成立、経過措置の確定、国税庁のQ&A公表、支援の具体化——これらのタイミングで更新します。各記事の冒頭に最終確認日を記載しているので、読むときはそこを確認してください。

まとめ

  • 特例税率は2029年3月31日で終わり、飲食料品は8%に戻る
  • 戻ると店内と持ち帰りの差は9ポイントから2ポイントに縮む(いまと同じ状態)
  • 制度の側も2回あることを前提に作られている(総額表示・中間申告の特例に2029年の規定がある)
  • 2回目のほうが難しい。お客様から見れば値上げで、しかも世の中の食料品が一斉に上がる時期に重なる
  • 2年経つと「下げたこと」は覚えられていない。だから2027年の時点で期限つきだと伝えておく
  • 価格差で来ていた客は、差がなくなれば選ぶ理由を失う
  • 2年で残るのは認知・連絡手段・価格以外の理由の3つ。いずれも新しい投資は要らない
  • 1回目の作業は記録として残す(価格表示場所の一覧/設定変更の手順/迷った判定ケース)
  • 「いまなら安い」で集めた客数を、2年後も維持できる前提で計画しない

2年は、短いようで長い期間です。制度に振り回される2年にするか、価格以外で選ばれる状態をつくる2年にするか。決められるのは、いまのうちです。

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出典

本記事は2026年9月18日時点で公表されている資料にもとづいています。2029年以降の制度は確定していません。税務上の判断は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

投稿者プロフィール

matokaスタッフ
matokaスタッフ
飲食店専門のWEB集客支援を行う、matoka株式会社(東京都品川区西五反田)の編集チームです。

普段の仕事は、Googleビジネスプロフィールの運用と口コミ対応(MEO対策)、食べログ・ホットペッパーグルメなどグルメサイトの運用代行、SNS運用とホームページ制作、訪日外国人向けの多言語対応、AIを使ったMEO支援(droptip)、そして成果報酬型のインフルエンサーPR「clues restaurant」の運営です。

このブログには、その現場で実際に手を動かして分かったことを書いています。AI検索(ChatGPTなど)に自分の店がどう出るかの確かめ方、口コミ返信やGoogleマップ投稿の時短、グルメサイトとMEOの使い分け、多言語メニュー、求人票、決済まわりのリスクまで、テーマはすべて店舗からの相談が出発点です。

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