売上編:店内10%とテイクアウト1%をメニューにどう書くか|表示の3つのやり方
同じ唐揚げ定食が、店内で食べれば1,100円、持ち帰れば1,010円。税抜1,000円の料理で、90円の差が生まれます。
この差を、メニューにどう書くか。価格をそろえるのか、分けるのか。券売機はどうするのか。正解が決まっていないぶん、店ごとに考えるしかない部分です。
この記事では、表示の選択肢と、切り替えの実務を整理します。あわせて「持ち帰りのほうが安い」という状態を、店の側からどう扱うかも考えます。
この記事の前提
- 確定:2026年9月15日に閣議決定された大綱の内容と、現行の総額表示義務
- 未確定:法案は未提出です
- 最終確認日:2026年9月18日
価格表示に関する法令上の判断や、税務上の判断は専門家にご確認ください。本記事は自店の適正価格を提示するものではありません。
まず守るべき線——総額表示のルール
選択肢を考える前に、外してはいけない線を確認します。
国税庁は総額表示義務を「事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額(地方消費税額を含む。)を含めた価格(税込価格)を表示することを義務付けるもの」と説明しています。
そして大綱は、今回の引下げにあたっても次のとおり明記しています。
例えば税抜価格(いわゆる本体価格)のみを表示する方法や税抜価格に続けて「+税」とのみ表示する方法など、税込価格を表示しない方法は、引き続き認められないこととする。
「税抜1,000円+税」という書き方に逃げることはできません。ここは選択肢の外です。
なお、外食業界はこの点を変えるよう求めています。日本フードサービス協会など外食関係4団体は2026年7月14日の緊急メッセージで「『税抜き価格+税』という表示も可能とすること」を要望し、同協会は9月10日の訴えでも「本体価格+『税』(標記例:1,000円+税)」の表示を選択できるよう求めています。ただし、その翌週に閣議決定された大綱は、この方法を「引き続き認められない」と明記しました。要望は出ていますが、現時点の方針は否定です。「+税」表示に戻れる前提で準備を進めないほうが安全です。
一方で、範囲もあります。国税庁は「価格を表示していない場合にまで、税込価格の表示を義務付けるものではありません。また、口頭で伝えるような価格は、総額表示義務の対象とはなりません」としています。表示している価格が対象ということです。
書き方には幅があります。国税庁が挙げている例(標準税率10%の場合)は次のとおりです。
- 11,000円
- 11,000円(税抜価格10,000円)
- 11,000円(うち消費税額等1,000円)
- 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
- 11,000円(税抜価格10,000円、消費税率10パーセント)
- 10,000円(税込価格11,000円)
税込価格が分かる形になっていればよい、と理解して差し支えありません。
表示の3つのやり方
店内と持ち帰りで税率が違う以上、メニューの書き方は3つに分かれます。

やり方1:税込価格を2つ並べる
「店内 1,100円/お持ち帰り 1,010円」のように、両方を書く形です。
利点:正確で、お客様が迷いません。持ち帰りのほうが安いことが伝わるため、持ち帰りを伸ばしたい店には追い風になります。
注意点:メニューの情報量が倍になります。品数が多い店では読みにくくなり、レイアウトの作り直しが必要になることがあります。
やり方2:税込価格をそろえる(税抜価格を変える)
店内も持ち帰りも同じ税込価格にする形です。持ち帰り側の税抜価格を上げることで実現します。
利点:メニューが1本で済み、オペレーションが最も簡単です。レジの打ち間違いによる価格トラブルも起きません。
注意点:「減税分が還元されていない」と受け取られる可能性があります。また、持ち帰りの価格競争力は生まれません。選ぶなら、値付けの考え方を説明できるようにしておいてください。
やり方3:商品によって分ける
持ち帰りの主力商品だけ税込価格を下げ、その他はそろえる、といった形です。
利点:主力に絞って価格の魅力を出せます。
注意点:いちばん複雑です。メニュー・レジ設定・スタッフ説明のすべてが増え、2029年に戻すときも同じ手間がかかります。品数の少ない店以外では、負担が見合うかを慎重に見てください。
選ぶときの目安
3つのどれを選ぶかは、持ち帰りを伸ばしたいかどうかと品数でおおよそ決まります。
- 持ち帰りを伸ばしたい/品数が少ない→ やり方1(2つ並べる)が向きます
- 店内が主力/品数が多い→ やり方2(そろえる)が現実的です
- 持ち帰りの主力が数品だけ→ やり方3も選択肢になります
どれを選んでも、2029年に一度戻す必要があることは変わりません。手間の総量は「2回分」で見積もってください。1回目に凝りすぎると、2回目が重くなります。
券売機・モバイルオーダーがある店
やり方1を選ぶと、ボタンや商品登録が2倍になる可能性があります。券売機の場合は物理的なボタン数の制約もあります。表示方法を決める前に、機器側で何ができるかを先に確認してください。決めてから「できない」と分かるのが、いちばん手戻りの大きいパターンです。
切り替え期間の特例をどう使うか
大綱には、切り替え時に限って使える表示の特例が用意されています。
ただし前提があります。「総額表示義務に直ちに対応することが困難な事情がある場合に限り」とされており、さらにその表示価格が本来表示すべき税込価格であると誤認されないための措置を講じている場合に限られます。
大綱が想定している「困難な事情」として挙げられているのは、夜間の値札の貼替作業に対応できない、カタログや商品パッケージ自体に価格が印字されているといった状況です。
使える期間は次のとおりです。
| 期間 | 表示できる価格 |
|---|---|
| 2027年4月1日〜5月31日 | 軽減税率(8%)に基づく税込価格 |
| 2027年2月1日〜3月31日 | 特例税率(1%)に基づく税込価格 |
| 2029年2月1日〜3月31日 | 軽減税率(8%)に基づく税込価格 |
| 2029年4月1日〜5月31日 | 特例税率(1%)に基づく税込価格 |
読み方を整理します。切り替え日の前2か月は「新しい税率の価格を先に出せる」、後2か月は「古い税率の価格をまだ出せる」という設計です。
実務的には、印刷物やパッケージのように差し替えに時間がかかるものの逃げ道と考えるのが実態に近いでしょう。レジやモバイルオーダーのように即座に変えられるものは、この特例に頼る理由がありません。
場所別の更新チェック
国税庁は、総額表示義務の対象について表示媒体を問わないとしています(店頭表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など)。つまり自店が価格を出しているところは、すべて更新の対象です。
洗い出しの一覧を置いておきます。これは2029年にもそのまま使えます。
- 店内:メニューブック、卓上メニュー、壁の短冊、ランチボード
- 店頭:黒板、立て看板、のぼり、ショーケースの値札
- 機器:券売機、レジの商品登録、セルフオーダー端末
- 自社の発信:自社サイト、Googleビジネスプロフィールに登録したメニュー、SNSの投稿画像
- 他社の媒体:デリバリーアプリ、グルメサイト、予約サイト、紙のクーポン誌
- 配布物:チラシ、ショップカード、テイクアウト用のメニュー表
見落としやすいのは他社の媒体とSNSの過去投稿です。前者は自分で変えられないことがあるため、誰にいつ連絡するかを先に決めておく必要があります。後者は削除するか、価格が古いことが分かる状態にしておくのが安全です。
「持ち帰りのほうが安い」をどう扱うか
最後は、値付けではなく見せ方の話です。
やり方1を選ぶと、メニュー上で持ち帰りが安いことが常に見える状態になります。これは、店にとって二面性があります。
追い風になる面:持ち帰りを伸ばしたい店にとっては、説明なしで価格の魅力が伝わります。中食に流れる需要を、自店の持ち帰りで受け止めやすくなります。
向かい風になる面:店内飲食が主力の店では、店内で食べる理由を問われる形になります。「同じものが90円安いのに、なぜ店で食べるのか」という問いが、メニュー上に常に置かれることになります。
ここで大事なのは、その問いに答えを用意しておくことです。店内飲食には、持ち帰りにない価値があります。
- できたてを最良の状態で食べられる(揚げ物、麺類、熱い料理ほど差が大きい)
- 席と時間を使える(片づけがいらない、人と話せる)
- その場でしか出せないもの(提供直後が前提の料理、店内限定の器や演出)
これらは、すでに提供している価値です。新しく何かを足す必要はありません。ただ、言葉になっていないことが多い。90円の差が可視化される以上、伝わる形にしておく価値があります。
逆に、店内と持ち帰りでまったく同じものを同じように出しているのであれば、価格差が効いてくるのは自然なことです。その場合は、持ち帰りを主戦場と考えて設計し直すほうが筋が通ります。
まとめ
- 税抜価格のみ・「+税」のみの表示は引き続き認められない(大綱に明記)
- 一方、表示していない価格・口頭で伝える価格は総額表示義務の対象外
- 表示のやり方は3つ。税込を2つ並べる/税込をそろえる/商品によって分ける
- 券売機・モバイルオーダーの制約を先に確認する。表示方法を決めてから「できない」と分かるのが最悪の手戻り
- 切り替え期間の特例は「直ちに対応することが困難な事情がある場合に限り」。印刷物やパッケージ向けで、レジには不要
- 特例の期間は切り替え日の前2か月と後2か月(2027年・2029年の両方に用意されている)
- 価格を出している場所をすべて洗い出す。他社の媒体とSNSの過去投稿が見落としやすい
- 一覧は2029年にそのまま使えるので残しておく
- 持ち帰りが安く見えることは追い風にも向かい風にもなる。店内で食べる理由を言葉にしておく
- 店内と持ち帰りが同じものなら、持ち帰りを主戦場として設計し直す判断もある
メニューの書き方は、制度が決めてくれません。ただ、決め方の順番はあります。機器の制約を確認し、表示のやり方を選び、出している場所を洗い出す。この順で進めれば、手戻りは最小で済みます。
出典
- 内閣官房飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(令和8年9月15日 閣議決定・2026年9月17日確認)
- 国税庁No.6902 「総額表示」の義務付け(同)
- 国税庁軽減税率制度の概要(同)
- 外食関係4団体食料品の消費税率軽減に関する緊急メッセージ(2026年7月14日・日本フードサービス協会サイト掲載)
- 一般社団法人日本フードサービス協会食料品の消費税率引き下げによる税率差拡大に対するJFの訴え(2026年9月10日・2026年9月18日確認)
本記事は2026年9月18日時点で公表されている資料にもとづいています。価格表示に関する法令上の判断や税務上の判断は専門家にご確認ください。本記事は自店の適正価格を提示するものではありません。
投稿者プロフィール
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飲食店専門のWEB集客支援を行う、matoka株式会社(東京都品川区西五反田)の編集チームです。
普段の仕事は、Googleビジネスプロフィールの運用と口コミ対応(MEO対策)、食べログ・ホットペッパーグルメなどグルメサイトの運用代行、SNS運用とホームページ制作、訪日外国人向けの多言語対応、AIを使ったMEO支援(droptip)、そして成果報酬型のインフルエンサーPR「clues restaurant」の運営です。
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